感染性粉瘤について
 
 
 粉瘤は皮膚に接した皮下にできるおできのようなもので、体中どこでも出現します。特に背中に好発し、ふつうは硬く中央部に孔があり皮膚とつながっています。周囲を圧迫すると、チーズ様の物質が排出することもあります。体中を詳しく探すと、ほぼすべての成人に存在します。風呂に長く入らなかったり、体を不潔にしておくと、化膿しやすく、痛みが出現し粉瘤も大きくなります。
 初期には抗生物質の投与で、治癒することもありますが、何度も再発しながら増大をくりかえします。その理由は粉瘤の袋が皮膚でできており、体の中に落ち込んだ皮膚の角化層が、脱落して溜まり増大する構造になっているからです。
 場所にもよりますが、 体の表面下に1cm以上の固まりを触れたら掛かり付け医で、一度観てもらうことをすすめます。この時点で完全切除するのが理想ですが、あまり邪魔にもならないために放置している場合が多いようです。
 次に感染して腫れ上がった粉瘤の治療法について、説明します。今までは化膿した粉瘤は再感染を恐れて切開排膿しか出来なかったのですが、これでは袋が残り必ず再発します。そこで袋まで完全に取り除く方法を考案論文(2)に発表いたしました。基本的なアイデアは、ベトナム戦争で傷ついた兵士の汚れた傷を化膿させずに治療する方法として用いられた、遅延型一次縫合法です。下記に示します方法です。この方法ですと外来切除後約2週間できれいに治ります。
(参考文献:MiYata.T:Japanese Jurnal of Surgery1989,19;532−534)
 
宮田術式
 
 
感染粉瘤治療の新術式  特に背部に生じたものを中心に
 
 
従来の背部感染粉瘤治療法
 
(1)抗生剤のみ (2)切開のみ (3)切開掻爬
 
病巣全摘出後縫合糸のかけ方「宮田術式」
切除標本
 
 
 
宮田式背部感染性粉瘤手術の手技
 
 
宮田術式のまとめ
 背部にできる感染性アテローマの治療法として原発巣摘出と遅延一次縫合との組み合わせは患者病悩期間の短縮(摘出後抜糸まで11.4日)と再発防止に有効な治療法である。